2017年3月18日土曜日

世界一豊かなスイスとそっくりな国ニッポン 川口 マーン 惠美

スイスに学ぶべき点とは?

 ドイツのシュトゥットガルト在住である、川口 マーン 惠美さんの著作です。
従って、日本とスイスだけでなく、ところどころ、ドイツ在住者ならではの視点も入り、
非常に興味深い切り口となっています。

 個人的に興味深かったのは、「第6章 スイスの農業は実は観光業」ですね。
スイスでは環境や景観に対する努力に補助金がでています。
なるほど、貿易立国のスイスは高い関税をかければ輸出が不利になり、
また、輸入品の価格は跳ね上がり、庶民の財布を直撃します。
そうであれば、スイスの主要産業の観光業のためにも、
美しい景観を維持してくれる農業に補助金を払うのはリーズナブルというわけです。
筆者はまた、「景観維持の農業は日本でできるか」(p118)という問題提起も。

 この景観維持のための農業という視点、呉智英先生の著書にもあります。
呉先生の「サルの正義」という本に「水田はすべて国立公園に」
という章があります。
 こちらでは、「全水田の国立公園化、全農民の学芸員化」により、
日本人の原風景である懐かしき水田風景を維持できる、とあります。

 日本でもこの論点から農業を論じないと、日本の美しい農村が消えて、
大変なことになるのでは?と心配してしまいます。

 上記のみならず、日本がスイスから学ぶべき点(国防、移民政策)も
独自の視点から述べられていて面白かった本です。

2017年3月12日日曜日

日本の聖域 ザ・タブー (新潮文庫) 「選択」編集部

TVで語られることのない聖域に斬り込む

 「選択」という雑誌の「日本のサンクチュアリ」という連載が本書のネタ元です。
「選択」は通算500号も発行されている老舗月刊誌ですが、
ここまで続いている理由は本書によると以下の通りです。

五〇〇号まで積み重ねられた主な理由は二つあります。
①たくさん売ろうとしないこと
②広告に依存しないこと
「選択」は本屋で売っていない、妙な雑誌です。
キャッチフレーズは「三万人のための情報誌」。
(p6)

「選択」が独自路線を貫く硬派な雑誌であることがわかりますね。

 本書では、25のトピックスを取り上げて、鋭く切り込んでいきます。
ホットなトピックスとしては、「自民党東京都連」「スポーツマフィア 電通」
といったものが挙げられ、「理化学研究所」「国立がん研究センター」
といったトピックスでは公金の無駄使いを暴いていきます。

 一つ一つのトピックスは独立しているので、
興味があるものだけ読むということもできます。

 ネット上では聖域に斬り込んでいる人は多数いますが、
情報は玉石混交で真実を見極めるのは極めて困難です。
その点、本書は丁寧な取材に基づいているので安心して読めます。

 本書は上述の連載をまとめた本の第3弾で、文庫化にあたり
加筆修正が加えられているので、再読する価値もありです。
しかしながら、第一弾の衝撃を超えたか?というと微妙ですかね?
とは言え、「選択」への期待は引き続き継続することは間違いありません。


2017年3月11日土曜日

退職金バカ 50歳から資産を殖やす人、沈む人 中野 晴啓

50代で貯蓄0の方は一読をお薦め

 筆者の中野晴啓さんは、セゾン投信株式会社創業者にして、
セゾン投信株式会社 代表取締役社長兼CIO(チーフインベストメントオフィサー)
の方。
 故に終章では、「老後の資産運用に適した投資信託の選び方」
を取り上げて、適切な投資信託の選び方をアドバイスしてくれます。

 ここで述べられているのは

① 継続的な資金流入はあるか?
② 信託期間は無期限か?
③ 幅広く分散投資されているか?
④ 積立投資ができるか?
⑤ 分配金は最小限か?
⑥ 売買・管理コストは安いか?

と言った、投信選びではオーソドックスな考え方で、
上記で述べられたことがよく理解できない、ということであれば、
本書を一読することをお勧めいたします。

 本書が優れているのは、50代が実際にいくら持っているのか?
の統計的な数字を取り上げ、50代で貯金0という人が約3割もいる
という驚愕の事実からスタートし、ただし、ここから積立投信をしていていけば、
65歳までには何とかなりますよ、というのを具体的な数字を交え、
論を展開していることです。

 本書の「運用は死ぬまで続ける」(p87)という姿勢はその通り!
と思わせるものですね。
 本書を入口に、投資生活に入るというのはいいかもしれませんが、
紙面の関係からもあり、積立投信がいいと言う結論は鵜吞みにせず、
複数の意見を参考にした方がいいかな?と思います。

 個人的に共感するのは
「役員コースを狙えるところにいる人は別として、
今のポジションから大きく上に行くことのない「それ以外」の人は、
正直な気持ち、50歳を過ぎてから自分を捨てて会社にご奉公する必要は、
どこにもないと思います。」(p18)
という一文ですね。
 それを踏まえたうえでの、50歳からの生き方、
については参考になるところ大でした。


超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃 荒川 和久

既婚者こそ必読の独身研究家による日本の未来展望

 本書の始まりは「約20年後、人口の半分が独身という国に日本はなる」
という国立社会保障・人口問題研究所の推計からスタートします (p3)。
日本の「ソロ社会化」は不可避であるが故に、
ソロで生きる力をつけるべき、というのが本書の一貫したテーマです。

 本書は豊富なデータを駆使し、生涯未婚率が増え続けていること、
9割が結婚したいというデータは嘘であること、
3組に1組が離婚する時代(=結婚してもソロに戻る)である、
といった現代日本の現状を分析します。

 面白かったのは、江戸時代の離婚率は世界トップクラスだったということ。
江戸時代は離婚も多く、再婚も活発だったらしく、
筆者は
「明治以降西洋列強も追いつこうと西洋的な婚姻制度を
導入したことが間違いだったのではないかと、そう思わずにはいられない。
大正昭和にかけて、確かに離婚率は減り、皆婚状態になったが、
そもそも日本人には合っていないのだ。」(p155)
と今の日本人の未婚率・離婚率の上昇を日本の本来の姿と分析します。

 本書からは、ソロ社会は孤立社会ではない、ソロで生きるには人とのつながりが前提、
とソロ社会が決して暗い社会ではない、というより、
暗い社会にしてはいけない、という強いメッセージを感じます。

 私自身、未婚の中年男性であり、本書の主張には共感するところ大です。
むしろ、本書はもしかしたらソロになるかもしれない既婚者こそ
読んでほしい一冊かな?と思います。
(特に、結婚しないと一人前じゃない!と説教する「ソロハラ」の人は必読!)

本書構成

<目次>
第1章 増えるソロで生きる人たち

第2章 ソロで生きる人々を許さない社会

第3章 男たちは嫌婚になったのか

第4章 結婚してもソロに戻る人たち

第5章 ソロたちの消費

第6章 ソロ社会の未来

2017年3月7日火曜日

欧州の危機 庄司 克宏

欧州統合の歴史・理念を丁寧に解説

 本書のタイトルは「欧州の危機」となっていますが、
EU成立の歴史的背景、理念を丁寧に解説しており、
EUを単に経済的メリットや労働者目線から分析する本とは一線を画します。

 まずは、「欧州統合方程式としてのモネ方式」についての解説からスタートし、
本書の核である「アラカルト欧州」「2速度式欧州」についての
詳細な解説・分析へとつながります。

 本書の分析で印象的だったのは、EU各加盟国のEU加盟の
動機が異なるということです。
イギリスのフィリップ・アンソニー・ハモンド
(Philip Anthony Hammond)外相の証言を引用する形で
以下のようにまとめています。(p41)

① EUを欧州において戦争を繰り返させない防波堤とする
 (原加盟国:独仏伊、ベネルクス)
② 軍事的独裁の時代を経て新たな民主主義国家を強固なものとする
 (ギリシャ、スペイン、ポルトガル)
③ ソビエト共産主義の支配から解放を確実なものとする
 (ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロヴァキア等の中東欧諸国)
④ EUがイギリスの経済的利益に資するので
 (イギリス)

 上記のように、イギリスはそもそも独仏伊といったEU主要国とは
EUに対するスタンスが異なります。

 また、イギリス離脱後にイギリスとEUがどういう協定を結ぶか?
EUがどうなるか?といった分析も一読の価値ありです。

 Brexitから始まる欧州危機問題を整理するためにも、
最適の良書と思います。

2017年3月5日日曜日

かんたん時短、「即食」レシピ もしもごはん 今泉マユ子

災害に備えて必携&簡単料理レシピ

 本書は基本的には災害マニュアル的な本です。
しかしそれに止まらず、内容は多岐に渡っており、色々実用的になっています。
本書の構成は以下の通りです。

はじめに - もしもに備えて、食料備蓄のすすめ
STEP1 即食レシピ 災害発生~3日目までに最適レシピ
STEP2 4日目 ~ 7日目までに最適レシピ
STEP3 災害発生8日目 ~ に最適レシピ
「もしも」に備える知恵
おわりに - 「もしも」のときも笑顔でいるために

 「はじめに」の章では、災害に備えて備蓄食料を選ぶポイントや
何をどれだけ備蓄するか?といった基本的な事項について述べています。
備蓄食料は、ローリングストック法で消費するという本書の考えは
非常に参考になります。

 STEP1からSTEP3は実際の料理レシピ集です。
「食材をポリ袋に入れて混ぜるだけ」といった簡単なレシピが
豊富なカラー写真とともに記載されています。
こちらは、ライフラインが完全に停止した状態で、
電気も水も使わずにできる調理集で災害時に参考になるのはもちろん、
私のような料理苦手の独身男性の普段のレシピとしても役立ちます。

 「もしも」に備える知恵では、再び災害食についても触れられます。
管理栄養士の著者だけあり、高齢者の低栄養や食物アレルギー
についての解説も解り易いですね。
 震災時にはアレルギー食が配布される保証もなく、
(東日本大震災の時には、アレルギー対応食が一般物資と混じってしまったのこと)
個人レベルでも、こういった食料の備蓄も重要と認識しました。

 災害について色々と考える契機になる本でもあるな、と思います。
災害マニュアル本として、身近にあると心強い本であると言えますね。

こんなにあった!タダで楽しむ東京ライフ 改訂版 前田 波留代

都内在住者&サボリーマン必見!無料で東京を楽しもう!

 本書は「ただで楽しむ」をコンセプトに、
東京都内の美術館・博物館・工場・公園といった
様々な無料で楽しめるスポットを取り上げています。

 都内のお勧めスポットを取り上げている本は多いですが、
本書のように「無料」をキーワードに取り上げている本は少ないかと思います。
 中には、「これも無料か!!」というスポットも多く、
街歩きの参考になるかと思います。
 また、普段は有料ですが、無料公開日もあるよ!
というような施設(江戸東京博物館、新宿御苑、等々)も取り上げており、
お得情報も満載という感じですね。

 個人的に本書を読んでもらいたいのはサラリーマンですね。
営業で外回りをしている人でちょっと時間が空いたとき、
コーヒーショップで時間をつぶすよりも、
本書で取り上げている無料スポットで楽しまれたらどうですか?
というのが提案です。

 私も、仕事の合間に、本書を参考に「明治大学博物館」
「日本銀行金融研究所 貨幣博物館」に行ってきました。
ボーっとするより意義深い時間が過ごせると思いますよ。


自衛隊自主防衛化計画 毒島 刀也

在日米軍撤退後に日本の自主防衛にいくらかかるかを試算
 
本書の構成は

第1章 自主防衛化にはこれが必要だ!
第2章 自衛隊と在日米軍の戦力を徹底検証
第3章 日本周辺の軍事的脅威を徹底分析

となっており、それぞれ、ミクロ的な視点を駆使し記載されています。

 本書の結論は表紙に書かれている通り
【自衛隊「自主防衛化」計画 追加兵器総額 22兆8,013億円】
です。ただしこれは、20年計画であり、年換算だと、
1兆1,400億円/年ということになります。

 本書の特徴としては、上記金額をミクロ的視点から積み上げて算出したことにある。
すなわち、陸海空それぞれ、どんな兵器がどれだけ必要で、
それはいくらか?というものです。
 例えば、14ページの「海自兵器一覧」では、自主防衛に必要な海自兵器調達費を
8兆7,905億円とし、内訳を

・65,000トン級正規空母 × 4隻 (1兆6,000億円)
・戦略原潜 × 4隻 (2兆3,200億円)
・攻撃型原潜 × 4隻 (1兆2,800億円)
・新型潜水艦 × 4隻 (3,040億円)
・船舶用/潜水艦用原子力機関の開発 (3,000億円)
・8,200トン型護衛艦 × 4隻 (6,800億円)
・あかづき型汎用護衛艦 × 2隻 (1,500億円)
・あさひ型汎用護衛艦 × 16隻 (1兆2,000億円)
・新型補給艦 × 4隻 (2,000億円)
・P-1哨戒機 × 20隻 (2,400億円)

としています。
 本書のコンセプト通り、具体的な兵器名や推定調達金額が記載されていて、
解り易くなっています。
また、兵器の写真・イラストも豊富でイメージが掴みやすいのも本書の特徴です。

 個人的には、50ページから58ページまで記載されている、
イギリス軍と自衛隊の比較の論証が興味深かったです。
周囲を仮想敵国に囲まれた日本と同盟国に囲まれたイギリスでは事情は異なるものの、
同じ島国として参考になる点が多いとい主張は説得力があります。

 加えて、自衛隊の問題点の抽出、在日米軍の戦力分析、
日本周辺の軍事脅威の分析等、現在の日本を取り巻く環境を丁寧に分析しています。

 自主防衛には30兆円必要!等々、掛声だけの本とは一線を画し、
丁寧に作られている良書と思います。